毎日何気なく通っている道路沿いで、あなたは見えない危険にさらされています。車から排出される微小な粒子は、肺の奥深くまで侵入し、あなたや家族の健康を静かに蝕んでいるのです。実は世界では年間約900万人、日本だけでも約4万人が大気汚染による早期死亡に至っているという衝撃的な事実をご存知でしょうか?
- 自動車排出ガスによるPM2.5は世界で年間900万人の早期死亡を引き起こしている深刻な健康リスク
- 日本のディーゼル車は窒素酸化物と粒子状物質を多く排出し、特に都市部での大気汚染の主要原因
- 2026年度までの環境基準達成と2035年までの電動車100%移行が日本の大気改善の鍵
車の大気汚染物質とは何か?見えない脅威の正体

車について疑問を持っている人のイメージ
自動車から排出される大気汚染物質は、私たちの想像以上に多岐にわたります。まず理解しておくべきは、車のエンジンでガソリンや軽油が燃焼する際、完全燃焼すれば水と二酸化炭素だけが発生しますが、実際には不完全燃焼により様々な有害物質が生成されてしまうという事実です。
最も問題となっているのがPM2.5と呼ばれる微小粒子状物質です。これは直径2.5マイクロメートル以下という極めて小さな粒子で、髪の毛の太さの30分の1程度しかありません。この微小さゆえに、私たちが呼吸すると気管支を通り抜けて肺の奥深くまで到達し、さらには血管を通って全身に運ばれてしまうのです。
自動車から排出される主な大気汚染物質には、窒素酸化物、粒子状物質、硫黄酸化物、一酸化炭素、炭化水素などがあります。特にディーゼル車は、ガソリン車に比べて燃費効率が良い反面、窒素酸化物とPMを多く排出するという深刻な問題を抱えています。国立環境研究所の研究によれば、ディーゼル車から排出されるPMの粒径は0.1マイクロメートル以下の極めて微小な粒子が数多く含まれており、これが健康被害のリスクを高めているのです。
さらに注目すべきは、排気管から出た時点では粒子でなかった物質も、大気中で化学反応を起こして粒子化する二次生成粒子の存在です。火力発電所や工場、自動車から排出される硫黄酸化物や窒素酸化物、揮発性有機化合物が、大気中で光やオゾンと反応してPM2.5を生成します。つまり、目に見えない大気中で常に新たな汚染物質が作られ続けているのです。
車の大気汚染が引き起こす健康被害の実態
車の大気汚染による健康被害は、想像を絶するほど深刻です。2024年に発表された南洋理工大学の研究によれば、1980年から2020年の40年間で、PM2.5による早期死亡者数は世界で約1億3500万人に達し、そのうちアジアだけで9810万人を占めています。中国とインドがそれぞれ4900万人と2610万人と突出していますが、日本も200万人から500万人の早期死亡者を出しており、決して他人事ではありません。
日本国内のコホート研究では、さらに具体的な数字が明らかになっています。PM2.5濃度が10マイクログラム/立方メートル上昇するごとに、呼吸器疾患による死亡が16%、肺がんによる死亡が24%上昇するという衝撃的な結果が報告されています。また、循環器疾患死亡のハザード比も1.23倍に上昇し、PM2.5濃度の上昇と死亡リスクの間に明確な関連性が認められています。
2025年5月に大阪大学が発表した最新研究では、PM2.5が気道障害を引き起こすメカニズムが解明されました。PM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素が酸化ストレスを引き起こし、有害な反応性アルデヒドを生成することで、気道表面を覆う繊毛を選択的に障害します。この繊毛は異物を排出する重要な自浄作用を担っているため、障害されると肺炎リスクが大幅に増加するのです。
世界保健機構の報告では、PM2.5などによる大気汚染は、高血圧、喫煙、高血糖、肥満、高コレステロールに続く6番目の死亡リスク要因とされています。2019年時点で年間約880万人が肺がんや呼吸器疾患により死亡し、現在では年間約900万人(日本では約4万人)が大気汚染への曝露を原因とする早期死亡に至っていると推計されています。
特に注意すべきは、子どもや高齢者、呼吸器や循環器系の病気を持つ人などのリスクの高い層への影響です。環境省が定めた注意喚起のための暫定的指針である1日平均値70マイクログラム/立方メートル未満をクリアしていても、これらの人々には健康影響が生じる可能性があるため、体調に応じて慎重に行動する必要があります。
ディーゼル車が大気汚染の主犯格である理由
自動車による大気汚染の中でも、特に問題となっているのがディーゼル車です。ディーゼル車は燃料である軽油の価格がガソリンより安く、メンテナンスが簡単で燃費効率も良いという利点があります。しかし、その裏側には深刻な環境問題が隠されているのです。
ディーゼル車から排出されるDEP(ディーゼル排気粒子)は、粒径が1マイクロメートル以下の微小粒子で構成されており、PM2.5に対する寄与が大きいと考えられています。国立環境研究所の調査では、ディーゼル車の定常走行時における粒子の粒径分布を測定したところ、粒径0.1マイクロメートル以下の微小な粒子が数多く排出されていることが確認されました。
タイでは、大気汚染の主原因の約6割をディーゼル車の排ガスが占めていると言われており、政府は2025年1月以降に販売する新車について、ヨーロッパの排ガス規制である「ユーロ5」の準拠を義務化する予定です。日本でも東京、大阪、愛知などの大都市周辺を対象として、2001年に自動車NOx・PM法が定められ、一定期間を過ぎた古いディーゼル車については、新しい汚染物質の排出量がより少ない車への買い替えが義務付けられました。
さらに問題なのは、これらの微小粒子が排気管から大気中に排出された後の挙動です。高濃度の微小な粒子は、大気中で互いに凝集して粒径が刻々と変化します。また、排気ガス中に含まれる高沸点の炭化水素や硫黄化合物は、大気との混合により温度が低下する際に粒子化したり、DEPの表面に凝縮したりして不安定な挙動を示します。このため、大気中におけるDEPの特性はまだ十分に把握されていないのが現状です。
日本の大気汚染対策と現在の達成状況
日本では1968年に大気汚染防止法が制定され、以来様々な対策が講じられてきました。高度経済成長期には四日市ぜんそくを皮切りに大きな社会問題となり、当時の大気汚染は硫黄酸化物を中心とした産業型でしたが、その対策は着実な進展を遂げています。
1970年代以降は大都市を中心とした都市・生活型大気汚染に変遷し、工場や事業所だけでなく、年々増加した自動車、特にディーゼル車から出る窒素酸化物や浮遊粒子状物質が原因となりました。これに対応するため、自動車の排気ガス削減に関する取り組みやEST(環境的に持続可能な交通)が進められてきました。
現在の状況を見ると、2023年度のPM2.5の環境基準達成率は、一般環境大気測定局で100%、自動車排出ガス測定局でも100%を達成しています。年平均値も一般局で8.5マイクログラム/立方メートル、自排局で9.1マイクログラム/立方メートルと、WHO基準である年間平均5マイクログラム/立方メートルに近づきつつあります。
中央環境審議会の答申を踏まえ、2026年度には対策地域の全常時監視測定局において、安定的かつ継続的な環境基準の達成を目指すこととなりました。また、乗用車については2035年までに新車販売に占める電動車の割合を100%にする、商用車については8トン以下の車は2030年までに20~30%、2040年までに電動車と合成燃料等の脱炭素燃料車で100%にするという目標が設定されています。
ヤマトグループの取り組みは、企業による実践的な対策の好例です。2023年度には自動車窒素酸化物と粒子状物質の排出量を2020年度比で25%削減する目標を掲げ、実際にはNOxを33%削減、PMを33%削減することに成功しました。また、大気汚染物質排出が少ない自動車を8,951台導入し、低炭素や大気汚染防止を目指した自動モビリティの調査・共同研究にも取り組んでいます。
今すぐできる個人レベルの対策と未来への展望
車の大気汚染から身を守るために、私たち個人ができることは数多くあります。最も身近な対策はマスクの着用ですが、効果は性能に左右されます。一般の不織布マスクでもある程度の効果は期待できますが、医療用や産業用の高性能な防じんマスクは、微粒子の捕集効率が高いフィルターを使用しており、PM2.5により効果的です。ただし、十分な効果を得るためには、顔の大きさに合ったものを空気が漏れないように着用することが重要です。
室内での対策としては、空気清浄機の活用が挙げられます。ただし、これもフィルターの有無や性能、機種によって効果は異なります。PM2.5濃度が暫定的指針である1日平均値70マイクログラム/立方メートルを超えた場合には、窓の開閉をなるべく控え、外気を取り込まないようにすることが重要です。
2026年2月16日時点の中国では、主要都市でAQI(大気質指数)が300を超える数値を記録し、「非常に不健康」から「危険」の範囲の大気質が観測されています。このような状況は日本にも影響を及ぼす可能性があり、黄砂が飛来する際には、その過程で大気汚染が悪化している地域を通過した場合、汚染物質が黄砂とともに日本まで到達することがあるため注意が必要です。
交通手段の選択も重要な対策の一つです。公共交通機関の利用を促進することで自動車の使用頻度や交通量を抑制できます。また、少ない燃料で走ることができるハイブリッドカーや、大気汚染物質を一切排出しない電気自動車などのエコカーへの乗り換えも検討する価値があります。
企業レベルでは、社用車を電気自動車などのクリーンエネルギーを燃料とする車に変えることが取り組みやすい対策となります。トヨタ自動車は2030年に新車販売の8割を電気自動車に置き換える方針を出しており、本田技研工業は2040年に発売する新車をすべて電気自動車と燃料電池車とする目標を立てています。
政府の支援策も充実してきています。環境省は「ゼロカーボン・ドライブ」として、再生可能エネルギー電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したモデル事業を開始し、電気自動車やハイブリッド車を購入する個人、企業に対して補助金を支給しています。電動車の普及を促す施策として、車両導入に対する各種補助、自動車税・軽自動車税の軽減措置、自動車重量税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置も講じられています。
信号待ちでのアイドリングストップ、本当に効果あるの?

車のイメージ
「信号待ちでエンジンが止まって、また青信号でかかるけど、これって本当に意味あるの?」そんな疑問を持ったことはありませんか?実は私も最初はそう思っていました。でも実際に調べてみると、アイドリングストップには明確な効果がある一方で、使い方を間違えると逆効果になることもあるんです。
環境再生保全機構のデータによると、アイドリング状態とアイドリングストップを比較した場合、ガソリン車で約44%のCO2、ディーゼル車ではNOxが48%、CO2とPMが51%も削減されています。これは確かに大きな数字です。アイドリング10分あたりのCO2排出量は約90グラムなので、アイドリングストップを使えば約30グラムの削減が可能です。
しかし、ここで重要なのが「何秒以上停止するとき効果があるのか」という点です。実はエンジンの再始動にはアイドリング5秒分程度の燃料が消費されるため、5秒未満の停止でアイドリングストップを繰り返すと、かえって燃料を余分に消費してしまう可能性があるのです。
私の経験からすると、最も効果的なのは長い信号待ちや渋滞時です。例えば、いつも通る道で「ここの信号は長い」と分かっている場所では、アイドリングストップが大活躍します。逆に、一時停止標識で数秒止まるだけの場面では、むしろアイドリングストップをオフにした方が効率的です。
また、バッテリーへの負担も考慮する必要があります。アイドリングストップ搭載車のバッテリーは通常のものより1.5〜2倍も高価で、交換の目安は2〜3年です。短時間の停止でアイドリングストップを繰り返すと、節約した燃料代以上にバッテリー交換費用がかかってしまう可能性もあります。
実践的な使い方としては、停車時間が30秒以上見込まれる場合はアイドリングストップを活用し、短時間の停止が予想される場面では手動でオフにするのがおすすめです。最近の車にはキャンセルボタンがついているので、状況に応じて賢く使い分けましょう。
渋滞中の排気ガス対策、実際どうすればいいの?
渋滞に巻き込まれた時、前の車の排気ガスが気になって仕方ない経験、ありませんか?特にディーゼルトラックの後ろについてしまった時は最悪ですよね。窓を閉めても、なんだか排気ガスの匂いが車内に入ってくる気がして、子どもを乗せている時は特に心配になります。
ここで重要になるのが、エアコンの「内気循環」と「外気導入」の使い分けです。多くのドライバーが「常に内気循環にしておけば安心」と思っているようですが、実はこれが大きな間違いなんです。
JAFが2019年に行ったテストによると、内気循環で1時間走行した場合、車内の二酸化炭素濃度は最大で6,770ppmに達し、外気の約5.5倍になりました。一般的に3,000ppmを超えると眠気や注意力低下が起こる可能性があるとされているので、これは明らかに危険な数値です。実際、テスト参加者の中には「頭がぼんやりした」という人もいたそうです。
それでは、どう使い分けるべきなのか?私が実践している方法をご紹介します。
基本は外気導入です。通常の走行中は外気導入にしておくことで、車内の空気が常に入れ替わり、酸素濃度も適切に保たれます。最近の車のエアコンフィルターは性能が向上しており、外気導入でも花粉やPM2.5をある程度防いでくれます。
内気循環に切り替えるタイミングは以下の通りです。
トンネル内を走行している時(排気ガスが充満しやすい)
– 渋滞でディーゼル車や古い車の後ろについてしまった時
工事現場や野焼きの近くを通る時
– 急速に車内を冷やしたい、または暖めたい時(最初の5〜10分だけ)
重要なのは、内気循環にしたら30分から1時間に1回は必ず外気導入に戻すか、窓を開けて換気することです。私は渋滞中でも、トンネルを抜けた直後や、前の車との距離が開いた瞬間に外気導入に戻すようにしています。
さらに効果的なのは、エアコンフィルターを定期的に交換することです。メーカー推奨の交換サイクルは1〜2年、または走行距離1万〜2万kmごとですが、都市部で頻繁に運転する場合はもっと早く交換した方がいいでしょう。フィルターが目詰まりすると、エアコンの効きが悪くなるだけでなく、PM2.5や花粉を効果的に除去できなくなってしまいます。
実際、私も以前はエアコンフィルターの交換を2年以上サボっていたのですが、交換後は明らかに車内の空気が爽やかになりました。費用も2,000〜5,000円程度で、自分で交換できる車種も多いので、ぜひ定期的なメンテナンスをおすすめします。
子どもを車に乗せる時、これだけは知っておきたい実践的な配慮
小さな子どもを車に乗せる時、大人以上に大気汚染の影響を受けやすいことをご存知でしょうか?子どもの呼吸数は大人より多く、体重あたりの空気吸入量も多いため、同じ濃度のPM2.5でも、より多くの粒子を吸い込んでしまうのです。
保育園や幼稚園への送迎で毎日車を使っている私が、実践している対策をご紹介します。
まず朝の送迎時間帯は、通勤車両が多く排気ガス濃度が高くなりやすいです。可能であれば、少し早めに出発するか、交通量の少ないルートを選ぶことをおすすめします。私の場合、幹線道路を避けて住宅街を抜けるルートに変更したところ、信号待ちも減り、子どもも車内でストレスを感じにくくなりました。
チャイルドシートの位置も重要です。後部座席の中央が最も排気ガスの影響を受けにくいとされていますが、設置が難しい場合は運転席の真後ろに設置すると良いでしょう。助手席側は歩道に近く、停車時に窓を開けやすいというメリットもあります。
車内の空気清浄機も効果的です。最近は車載用の小型空気清浄機が3,000円程度から購入できます。私が使っているのはUSB給電式で、HEPAフィルター付きのものですが、確かに車内の匂いや空気の質が改善されました。ただし、空気清浄機だけに頼らず、基本的な換気を忘れないことが大切です。
また、幹線道路沿いや交差点近くに停車する時は、窓を絶対に開けないというルールを徹底しています。信号待ちで子どもが「窓開けて!」と言っても、交通量の多い場所ではガマンしてもらいます。代わりに、公園や空気のきれいな場所に着いたら、すぐに窓を全開にして換気するようにしています。
PM2.5濃度が高い日は、環境省の「そらまめ君」や各自治体のアプリで確認できます。私はスマホに通知設定をしていて、濃度が暫定的指針の70マイクログラム/立方メートルを超える予報が出た日は、できるだけ車での外出を控えるか、完全に内気循環で走行するようにしています。
古い車は本当に排気ガスが多いの?買い替えの判断基準
「今乗っている車、もう10年以上経つけど、まだ乗れるし…でも環境に悪いのかな?」そんな悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、2002年以前に製造された古いディーゼル車は、現在の規制基準と比べて窒素酸化物とPMの排出量が圧倒的に多いのが事実です。特に首都圏、大阪・兵庫圏、愛知・三重圏では、自動車NOx・PM法により、一定期間を過ぎた古いディーゼル車の使用が制限されています。
ガソリン車の場合も、排出ガス規制は年々厳しくなっています。2005年以降の「平成17年排出ガス規制」をクリアした車と、それ以前の車では、窒素酸化物の排出量に約75%もの差があります。
しかし、「じゃあすぐに買い替えなきゃ!」と焦る必要はありません。買い替えの判断は、以下のポイントを総合的に考慮すべきです。
まず車の製造年と走行距離です。10年以上前の車で10万km以上走行している場合、エンジンの劣化により排気ガスが増えている可能性が高いです。私の友人は15年落ちの車に乗っていましたが、車検時の排気ガステストでギリギリ合格という状態でした。
次にエンジンのコンディションです。アイドリング時に黒煙が出る、排気ガスの匂いが強い、エンジン音が大きくなったなどの症状があれば、排気ガスが増えているサインです。定期的なオイル交換や点火プラグの交換を怠っていると、こうした症状が出やすくなります。
年間走行距離も判断材料になります。年間1万km以上走行する人は、燃費の良い新しい車に買い替えることで、燃料代と環境負荷の両方を削減できます。逆に、年間3,000km程度しか走らない人は、製造時の環境負荷を考えると、今の車を大切に乗り続ける方が環境に優しい場合もあります。
最近注目されているのが、エコカー補助金やグリーン化特例です。2026年現在も電気自動車やハイブリッド車の購入に対する補助金制度が継続されており、自動車税の軽減措置もあります。古い車を廃車にして新しいエコカーに買い替える場合、思ったより負担が少ないケースも多いです。
私自身、2010年製のガソリン車から2024年製のハイブリッド車に買い替えましたが、燃費が約2倍に向上し、年間の燃料代が約10万円削減されました。補助金も活用できたので、5年程度で元が取れる計算です。
ただし、無理に買い替える必要はありません。今の車を適切にメンテナンスすることも重要な環境対策です。エンジンオイルの定期交換、エアフィルターの清掃、タイヤの空気圧チェックなど、基本的なメンテナンスを徹底するだけで、排気ガスを10〜15%削減できるというデータもあります。
通学路や幹線道路沿いに住んでいる場合の現実的な対策
「家が幹線道路沿いで、朝から晩まで車の音と排気ガスに悩まされている」という方からの相談をよく受けます。実は私の実家も国道沿いにあり、子どもの頃から排気ガスの匂いに慣れきってしまっていました。
しかし、大人になって健康について学んでから、その環境がどれだけリスクの高いものだったか気づかされました。実際、道路沿いに住む子どもは、そうでない子どもと比べて呼吸器疾患のリスクが1.5倍以上高いという研究結果もあります。
窓の開閉タイミングが最も重要です。朝の通勤ラッシュ時(7時〜9時)と夕方の帰宅ラッシュ時(17時〜19時)は、窓を閉め切って内気循環の空気清浄機を稼働させましょう。換気は交通量の少ない昼間や深夜に行います。
私が推奨するのは、家庭用空気清浄機の24時間稼働です。特に寝室には必須です。HEPAフィルター搭載の空気清浄機なら、PM2.5を99.97%除去できます。最近は省エネタイプも増えており、24時間稼働しても電気代は月額500〜1,000円程度です。
植物による自然のフィルターも効果的です。窓際に観葉植物を置くことで、ある程度の微粒子を捕捉できます。特にサンスベリアやポトスは、空気清浄効果が高いとされています。ただし、これはあくまで補助的な対策で、過度な期待は禁物です。
子どもの部屋や寝室は、できるだけ道路から遠い部屋を選ぶことをおすすめします。我が家では、子ども部屋を2階の裏側に配置し、道路側の1階は物置として使っています。これだけで、子どもが吸い込むPM2.5の量を大幅に減らせます。
また、洗濯物は絶対に外に干さないルールも徹底しています。PM2.5は衣類に付着しやすく、外干しした洗濯物を室内に取り込むと、それだけでPM2.5を持ち込んでしまいます。部屋干しや乾燥機を活用しましょう。
定期的な健康チェックも忘れずに。特に子どもの咳が長引く、喘息の症状がある、アレルギー症状が悪化したなどの場合は、すぐに医師に相談してください。大気汚染が原因の可能性もあります。
そして最終的な選択肢として、引っ越しを検討することも視野に入れるべきです。特に小さな子どもがいる家庭では、多少家賃が上がっても、空気のきれいな環境に住むことの価値は計り知れません。子どもの健康は、お金では買えませんから。
結局、今すぐできる最も効果的な対策は何?
ここまで様々な対策をご紹介してきましたが、「結局、何から始めればいいの?」という方も多いでしょう。優先順位をつけると以下の通りです。
すぐにできて効果の高い対策
- エアコンフィルターの交換(費用2,000〜5,000円、効果即座に実感)
- エアコンの内気循環と外気導入の正しい使い分け(費用ゼロ、効果大)
- アイドリングストップの賢い活用(費用ゼロ、効果中)
- PM2.5濃度が高い日の外出を控える(費用ゼロ、効果大)
中期的に検討すべき対策
- 車載用空気清浄機の導入(費用3,000〜15,000円、効果中)
- 家庭用空気清浄機の24時間稼働(費用月額500〜1,000円、効果大)
- 通勤ルートの見直し(費用ゼロ〜交通費増、効果中)
長期的に検討すべき対策
1. 古い車からエコカーへの買い替え(費用大、効果大)
2. 住環境の改善(引っ越し含む)(費用大、効果最大)
重要なのは、完璧を目指さず、できることから始めることです。すべての対策を一度に実行するのは現実的ではありませんし、継続できなければ意味がありません。
私の場合、まずエアコンフィルターを交換し、次に車載用空気清浄機を購入、そして半年後にハイブリッド車に買い替えるという段階的なアプローチを取りました。それぞれのステップで効果を実感できたので、モチベーションも維持できました。
ぶっちゃけこうした方がいい!
ここまで車の大気汚染について色々とお伝えしてきましたが、正直に言います。完璧に対策するなんて無理です。
でもね、だからといって何もしないのは違うと思うんです。私がこの数年間、実際に試行錯誤してたどり着いた結論は、「80点主義でいこう」ということでした。
具体的に言うと、まずエアコンフィルターだけは絶対に1年に1回交換してください。これだけで本当に変わります。車内の空気が明らかにクリーンになるし、何より自分でできるし、安い。ディーラーに頼むと工賃込みで5,000円くらいですが、ネットで買って自分で交換すれば2,000円程度です。YouTubeで「車種名 エアコンフィルター交換」と検索すれば、たいていの車種の交換方法が出てきます。
次に、渋滞時は迷わず内気循環にする。これも超簡単です。ボタン一つですから。ただし、30分経ったら必ず外気導入に戻す。スマホのタイマーを30分にセットしておくと忘れません。私はこれを習慣化してから、渋滞中の頭痛が激減しました。
そして子どもがいる家庭は、車載用空気清浄機を買ってください。3,000円で買えるものでも十分効果があります。プラシーボかもしれませんが、子どもの咳が減った気がするし、何より親として「できることはやった」という安心感が得られます。
古い車に乗っている人は、無理に買い替える必要はありません。ただし、エンジンオイルだけは絶対にケチらないでください。5,000kmごとの交換を徹底するだけで、排気ガスが全然違います。オイル交換をサボって環境に悪い車を走らせ続けるくらいなら、ちゃんとメンテナンスして今の車を大切に乗る方がよっぽど環境に優しいです。
そして最後に、PM2.5濃度が本当にヤバい日(70μg/m³超)は、思い切って外出を控える。「えー、そんな日にちょうど用事があったらどうするの?」って思うかもしれませんが、年に数回あるかないかです。その数回くらい、予定をずらしたっていいじゃないですか。自分の健康、家族の健康より大事な用事なんて、そうそうないですから。
正直、電気自動車に買い替えるとか、空気清浄機を家中に設置するとか、そういう理想的な対策を全部やれる人は限られています。でも、エアコンフィルターの交換とか、内気循環の使い分けとか、そういう小さなことなら誰でもできる。
大事なのは、完璧じゃなくてもいいから、できることを確実にやり続けることです。それだけで、あなたと家族が吸い込むPM2.5の量は、確実に減ります。そして、あなたの車から出る排気ガスも減ります。一人ひとりの小さな努力が積み重なれば、それは大きな変化になるんです。
だから、明日からでいいです。いや、今からでいいです。とりあえず車に乗ったら、エアコンのボタンを見てください。内気循環になってますか?外気導入になってますか?それを意識するだけで、第一歩です。
完璧主義は捨てましょう。80点でいいんです。いや、60点でもいい。でも、ゼロ点はダメです。何か一つ、今日から始めてみてください。
車の大気汚染に関する疑問解決
PM2.5が農産物に付着した場合、食べても危険なのか?
PM2.5が農産物に付着することは想定されますが、日本では摂食による健康被害は報告されていません。食品として摂取した場合は、体内への取り込み方が呼吸とは異なるため、気管支や循環器の発病リスクは限りなく低いといえます。市販の食品にはPM2.5の成分である硝酸塩や硫酸塩などの無機塩が元来含まれており、大気中のPM2.5よりはるかに多い量を普段から口にしています。このことからも摂食によるリスクの低さが伺えます。
黄砂とPM2.5には関係があるのか?
黄砂とPM2.5には明確な因果関係があります。黄砂は東アジアの砂漠から舞い上がった砂が大気を浮遊しながら降下する現象で、日本へ飛来する粒子は4マイクロメートル程度の大きさが主ですが、微小な粒子も一部含まれているため、飛来したタイミングでPM2.5の測定値が上昇することがあります。さらに重要なのは、黄砂が飛来する過程で大気汚染が悪化している地域を通過した場合、汚染物質が黄砂とともに日本まで到達する可能性があることです。
環境基準を達成していても健康被害は起こるのか?
はい、環境基準を達成していても健康被害が起こる可能性があります。世界117カ国の6,475都市を対象とした調査において、97%の都市でWHOの許容基準である年間平均5マイクログラム/立方メートルを上回るPM2.5が検出されています。日本の暫定的指針である1日平均値70マイクログラム/立方メートル未満をクリアしていても、特に子どもや高齢者、呼吸器や循環器系の病気を持つ人などは健康に影響が生じる可能性があるため、体調に応じて慎重に行動する必要があります。
電気自動車に変えれば本当に大気汚染は解決するのか?
電気自動車は走行時に排出ガスを一切出さないため、直接的な大気汚染の削減には大きく貢献します。ただし、電気を作る際に発電所から排出される分を合わせても、窒素酸化物や二酸化炭素の排出は通常の自動車より少なくなります。環境省が推進する「ゼロカーボン・ドライブ」では、再生可能エネルギーを使用した電気自動車の利用を促進しており、これにより発電時の排出も含めてCO2排出をゼロにする取り組みが進められています。
車の台数が増えているのに大気汚染は改善しているのか?
規制の効果や技術の進歩により自動車1台当たりの排気ガスの量は大幅に減少しています。実際、2023年度の二酸化窒素、浮遊粒子状物質、一酸化炭素の環境基準達成率はいずれも、一般局、自排局ともに100%を達成しています。ただし、自動車の台数が増えているため、継続的な対策は引き続き必要です。2021年の日本のCO2総排出量のうち、運輸部門からの排出量は17.4%を占め、その8割が自動車からの排出となっています。
まとめ一人ひとりの行動が未来を変える
車の大気汚染は、私たちが想像する以上に深刻な健康リスクをもたらしています。世界で年間約900万人、日本でも約4万人が大気汚染による早期死亡に至っているという事実は、決して無視できるものではありません。PM2.5が10マイクログラム/立方メートル上昇するごとに、呼吸器疾患による死亡が16%、肺がんによる死亡が24%上昇するという研究結果は、日常的に私たちが晒されているリスクの大きさを物語っています。
しかし、希望もあります。日本では2023年度にPM2.5の環境基準達成率が100%に達し、政府は2026年度までの継続的な達成と、2035年までの乗用車電動化100%という明確な目標を掲げています。企業も積極的に取り組みを進めており、電気自動車への移行やクリーンエネルギーの活用が加速しています。
大切なのは、一人ひとりが問題を認識し、できることから行動を始めることです。公共交通機関の利用、電気自動車やハイブリッド車への乗り換え、マスクの着用、空気清浄機の活用など、私たちにできることは数多くあります。また、大気汚染の状況を日々確認し、濃度が高い日には外出を控えたり、窓を閉めたりするなどの対策を取ることも重要です。
未来の世代に美しい空気を残すために、そして自分自身と家族の健康を守るために、今日から行動を始めましょう。車の大気汚染は深刻ですが、一人ひとりの意識と行動の変化が、必ず大きな改善につながるのです。


コメント