2026年1月1日に発生した能登半島地震では、多くの被災者が車中泊での避難を余儀なくされました。実は2016年の熊本地震でも、避難者の約6割が車中泊を経験したというデータがあります。なぜこれほど多くの人が車での避難を選択するのでしょうか?それは避難所での不安や、繰り返す余震への恐怖、そしてプライバシーを守りたいという切実な理由があるからです。しかし、車中泊避難には命に関わる危険が潜んでいることをご存知でしょうか?
エコノミークラス症候群による死亡事故、一酸化炭素中毒による窒息、そして低体温症による凍死。これらは決して他人事ではありません。正しい知識がなければ、安全な避難のつもりが命を落とすことにもなりかねないのです。
- 災害時の車中泊避難で最も警戒すべき3つの健康リスクとその具体的な予防法
- 2026年1月の能登半島地震から学ぶ車中泊避難の実態とメリット・デメリット
- 命を守るために車内に常備すべき必須アイテムと安全な避難場所の選び方
なぜ多くの人が災害時に車中泊避難を選ぶのか?

車中泊のイメージ
災害が発生したとき、私たちには複数の避難先の選択肢があります。指定避難所、親戚や知人宅、そして自家用車です。近年の大規模災害では、実に多くの方が車での避難を選択しています。
熊本県が実施した調査によると、2016年の熊本地震では避難者の約6割が車中泊を経験しました。その理由として挙げられたのは以下のようなものです。
大きな余震が何度も続く中、いつ倒壊するかわからない自宅では安心して休めません。避難所に行ったとしても、建物の安全性への不安は消えません。むしろ車内にいる方が、いざという時にすぐ動けるという安心感があるのです。
避難所で生活している間、誰もいない自宅が心配になります。実際に空き巣被害に遭ったケースも報告されており、自宅の近くで車中泊することで防犯面でも安心できるという声が多く聞かれました。
多くの避難所ではペットとの同伴が困難です。家族の一員であるペットを車内に残すことはできず、結果的に車中泊を選択せざるを得なかった方も少なくありません。環境省の災害対策ガイドラインでも、ペットの安全確保は飼い主の責任とされています。
さらに、2020年以降のコロナ禍では、密集を避けられる車中泊避難の重要性が再認識されました。避難所での集団感染リスクを考えると、車という個別空間は感染症対策としても有効なのです。
東京都の避難所収容能力は人口の約22%に過ぎないというデータもあり、そもそも全員が避難所に入れるわけではありません。このような背景から、車中泊避難は今後も重要な選択肢として位置づけられています。
命に関わる!車中泊避難で絶対に知っておくべき3大健康リスク
車中泊避難には重大な健康リスクが伴います。ここでは特に注意すべき3つのリスクについて詳しく解説します。
エコノミークラス症候群沈黙の殺人者
エコノミークラス症候群は、正式には静脈血栓塞栓症と呼ばれる病気です。長時間同じ姿勢でいることで、足の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが血流に乗って肺の血管を詰まらせてしまいます。
車のシートは本来座るために設計されており、就寝用には最適化されていません。特に膝を曲げた状態で長時間過ごすと、ふくらはぎの筋肉が働かず、血液の流れが停滞します。さらに災害時は精神的ストレスも加わり、水分摂取を控えがちになることで血液の粘度が上昇し、血栓ができやすくなるのです。
熊本地震では、車中泊避難をしていた複数の方がエコノミークラス症候群を発症し、中には命を落とされた方もいました。初期症状はふくらはぎの痛みやむくみですが、血栓が肺に達すると激しい胸の痛みや呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
予防の3つの鉄則は以下の通りです。4〜5時間ごとに車から降りて歩く、ふくらはぎのマッサージを行う、そして1〜2時間おきにコップ1杯程度の水分を摂取することです。アルコールやカフェインの多い飲み物は利尿作用により脱水を進めるため避けましょう。
また、足を下げて寝ないことも重要です。座席の下に荷物や丸めたタオルを置いて足を乗せ、なるべく足を上げた状態を保つことで血流が促進されます。車中泊用のエアマットやベッドキットを使用し、できるだけフラットな寝床を作ることも効果的です。
一酸化炭素中毒見えない恐怖
一酸化炭素中毒は、車中泊避難における最も恐ろしいリスクの一つです。一酸化炭素は無色無臭の気体で、人間の感覚では察知できません。しかし、わずかな濃度でも人体に深刻な影響を及ぼします。
JAFの実証実験によると、車が雪に埋もれた状態でエンジンをかけ続けると、わずか16分で車内の一酸化炭素濃度が400ppmに達し、22分後には1000ppmまで上昇しました。一般的な成人の場合、400ppmで1〜2時間程度で頭痛が起き、1000ppmでは2時間で失神する危険性があります。
一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと強く結合し、血液の酸素運搬能力を阻害します。初期症状は軽い頭痛や疲労感、吐き気など風邪に似ているため気づきにくく、手足のしびれで動けなくなってから重症化していることに気づくケースが多いのです。
冬季の大雪時には特に注意が必要です。積雪でマフラーが塞がれると、排気ガスが車内に逆流します。2022年末から2023年初頭にかけての大雪では、複数の一酸化炭素中毒による死亡事故が発生しました。また、ガスコンロやカセットガスヒーターなどの燃焼機器を車内で使用することも絶対に避けてください。密閉された車内では、わずかな時間でも危険なレベルまで濃度が上昇する可能性があります。
予防策として最も重要なのは、車中泊時は基本的にエンジンを切ることです。寒さ対策は電気毛布やポータブル電源を活用した暖房で行い、どうしてもエンジンをかける必要がある場合は、定期的に窓を開けて換気を行い、マフラー周辺に雪が積もっていないか確認しましょう。一酸化炭素チェッカーを車内に常備することも強く推奨されます。
季節による健康リスク熱中症と低体温症
車内は外気の影響を非常に受けやすい環境です。夏場は密閉された車内の温度が急上昇し、熱中症のリスクが高まります。一方、冬場はエンジンを切ると急速に車内温度が下がり、低体温症や凍傷の危険があります。
夏の対策としては、標高の高い涼しい場所を選ぶ、サンシェードで日光を遮断する、そして風通しの良い場所に駐車することが重要です。ただし、防犯面を考慮して窓は少しだけ開ける程度にとどめましょう。ポータブル電源と扇風機やポータブルクーラーの併用も効果的です。
冬の対策としては、車内の窓にカーテンやシェードを使用して冷気を遮断することが基本となります。電気毛布や寝袋、防寒着を重ね着することで、エンジンをかけなくても十分に暖かく過ごせます。車内温度は最低でも18度以上を保つよう心がけてください。
知らないと後悔する!車中泊避難のメリットとデメリット
車中泊避難にはメリットもあればデメリットもあります。それぞれを正しく理解した上で、状況に応じた判断ができるようにしましょう。
車中泊避難の5つのメリット
プライバシーの確保が最大のメリットです。避難所では大勢の人が同じ空間で過ごすため、周囲の目を気にせず過ごすことは困難です。車内であれば自分の車がプライベート空間となり、特に小さな子どもがいる家庭や女性にとって安心感があります。
感染症対策としても有効です。大勢の人が集まる避難所では、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクが高まります。車中泊なら他者との接触を減らせるため、衛生面でも安心です。
移動の自由度が高い点も重要です。災害時は状況が刻一刻と変化します。車があれば、より安全な場所へすぐに移動できるため、柔軟な対応が可能です。
必要なものがすぐに取り出せる利便性もあります。車内にはあらかじめ防災グッズや食料、水を備えておくことができ、家を出る時間が限られている場合でも安心です。
最後に、ペットと一緒に避難できる点も大きなメリットです。多くの避難所ではペットとの同室が難しい状況ですが、車中泊であればペットと一緒に安全を確保できます。
見逃せない5つのデメリット
前述のエコノミークラス症候群や一酸化炭素中毒などの健康リスクが最も深刻なデメリットです。長時間狭い車内で同じ姿勢を続けると、血流が悪くなり重大な健康被害につながります。
燃料の確保も大きな課題です。車内でエアコンを使うと燃料を消費し続けます。災害時はガソリンスタンドが営業していなかったり、長蛇の列ができたりすることも多く、常に燃料をある程度確保しておく必要があります。
睡眠環境の問題も無視できません。車のシートは長時間の睡眠には向いておらず、しっかりと休めないことがあります。睡眠不足は判断力の低下や体力の消耗につながり、災害時の行動に影響を及ぼします。
トイレの確保も深刻な問題です。車中泊では自宅のように自由にトイレを使うことができません。災害時は公共トイレが使えなくなることもあり、事前に携帯トイレを準備しておく必要があります。トイレを控えることで水分摂取が減り、エコノミークラス症候群のリスクも高まります。
最後に、駐車場所の制約があります。車中泊ができる場所は限られており、むやみに停車すると周囲の迷惑になったり、救助活動の妨げになったりすることもあります。また、土砂崩れや浸水、倒壊しそうな建物の近くは避ける必要があります。
今すぐ準備!車中泊避難を安全に乗り切るための必須対策
車中泊避難を安全に行うためには、事前の準備が欠かせません。ここでは具体的な準備事項と対策をご紹介します。
車内に常備すべき必須アイテム
エコノミークラス症候群対策グッズとして、着圧ソックスまたは弾性ストッキングは必需品です。医療用のものが理想ですが、市販のものでも効果は期待できます。車中泊用のエアマットやクッションも、体を水平に保つために重要です。シート間の段差や隙間を埋めることで、血流の停滞を防ぎます。
水分と非常食の確保も重要です。エコノミークラス症候群の予防には1〜2時間おきの水分補給が必要です。ミネラルウォーターや薄いお茶を1人あたり1日3リットルは準備しましょう。また、脱水予防には食事も重要なので、最低3日分の非常食を用意してください。
携帯トイレは1日5回×家族の人数×3日分を目安に準備します。災害時は仮設トイレが不足したり不衛生になったりすることが多く、携帯トイレがあれば安心です。トイレを我慢することで水分摂取を控えてしまうことも防げます。
防寒・暑さ対策グッズとして、冬は電気毛布や寝袋、毛布、カイロなどを、夏はサンシェード、扇風機、冷却シートなどを準備します。ポータブル電源があれば、エンジンを切った状態でも電化製品が使用できます。容量は1000Wh以上の大容量モデルが推奨されます。
一酸化炭素チェッカーも必ず車内に常備しましょう。無色無臭の一酸化炭素は自分では気づけません。万が一に備えて、命を守るための投資として検討してください。
その他の必需品として、懐中電灯、モバイルバッテリー、救急セット、防災ラジオ、カーテンやシェード、タオルや衣類なども準備しておきましょう。これらは普段から車内に保管しておくことをおすすめします。
安全な車中泊避難場所の選び方
車中泊避難場所の選択は、命を守る上で極めて重要です。近年、多くの自治体が車中泊避難場所を指定する取り組みを進めています。
京都府や千葉市、寝屋川市などでは、民間企業と協定を結び、ショッピングモールの駐車場などを車中泊避難場所として提供しています。これらの場所は市のホームページやハザードマップで確認できますので、お住まいの地域の情報を事前にチェックしておきましょう。
避難場所を選ぶ際のポイントは、まず安全性です。土砂崩れや浸水の危険がない場所、倒壊の恐れのある建物から離れた場所を選びましょう。ハザードマップで危険区域を確認することが重要です。
次にアクセス性です。救助活動の妨げにならない場所、かつ支援物資が届きやすい場所を選びます。孤立しすぎた場所は避けましょう。
トイレの近さも重要な要素です。公共トイレやコンビニが近くにある場所が理想的です。ただし、災害時はこれらの施設が使用できない可能性もあるため、携帯トイレの準備は必須です。
最後に他の車との距離も考慮しましょう。密集しすぎると他車の排気ガスの影響を受ける可能性があるため、なるべく風通しの良い開けた場所を選び、適度な距離を保ちましょう。
日頃からできる準備と訓練
災害は突然やってきます。いざという時に慌てないよう、日頃から準備と訓練をしておくことが大切です。
まず燃料は常に満タンにしておく習慣をつけましょう。ギリギリまで使い切ってから補給するのではなく、半分を切ったら給油する習慣をつけることで、災害時に燃料不足に陥ることを防げます。
避難計画を家族で話し合うことも重要です。災害時に誰が車中泊をし、誰が避難所に行くのか、ペットはどうするのか、連絡方法はどうするのかなど、具体的にシミュレーションしておきましょう。
実際に車中泊を体験してみることも有効です。アウトドアレジャーの一環として車中泊を経験しておくと、どのような準備が必要か、どこが不便かが具体的にわかります。楽しみながらノウハウとアイテムが蓄積されます。
定期的に備蓄品のチェックを行いましょう。非常食の賞味期限、懐中電灯の電池、ポータブル電源の充電状態などを確認し、必要に応じて更新します。年に2回、防災の日や年末などにチェックする習慣をつけるとよいでしょう。
実際の車中泊避難で直面する7つのリアルな問題と体験的解決法

車中泊のイメージ
理論はわかったけど、実際に車中泊避難をすると予想外のトラブルに遭遇します。ここでは、多くの人が実際に体験した問題とその現実的な解決策をお伝えします。
問題1思ったよりも眠れない!シートの段差と硬さ対策
車中泊初心者が必ずぶつかる壁が「シートの段差」です。シートを倒しても、座面と背もたれの境目、シート同士の隙間など、意外と段差だらけです。体験者の声では「腰が痛くて2時間しか眠れなかった」という報告が圧倒的に多いのです。
プロの対処法は、まず自宅でシートアレンジを試すことです。災害時に初めて試すのではなく、平時に一度車内で寝てみましょう。段差部分を見つけたら、そこにバスタオルや衣類を詰めます。ポイントは「詰めすぎない」ことです。高くしすぎると逆に寝にくくなります。
経験者のテクニックとして、ヨガマットを2枚重ねにする方法があります。市販の車中泊マットは高価ですが、ホームセンターのヨガマットなら1枚1000円程度です。2枚重ねることでクッション性が増し、段差もある程度吸収できます。その上に寝袋を敷けば、かなり快適になります。
また、完全にフラットにこだわる必要はありません。軽くリクライニングした状態で、足元にクッションやバッグを置いて高さを調整する「半フラット」スタイルの方が、実は楽に眠れるという声も多いのです。体格や車種によってベストポジションは違うので、事前に試行錯誤しておきましょう。
問題2トイレ問題の現実と本音ベースの解決策
正直に言いましょう。車中泊避難で最もストレスになるのがトイレ問題です。特に女性や高齢者にとっては深刻です。公衆トイレが使えれば良いのですが、災害時は断水や破損で使えないことも多く、夜中に暗い中をトイレまで歩くのも不安です。
携帯トイレを準備しろとはよく言われますが、実際に車内で使うのは心理的ハードルが高いものです。体験者によると「家族が隣で寝ている中で使うのは無理」という声が多数です。
現実的な解決策は以下の通りです。まず、日中のうちに複数のトイレ候補地をリストアップしておきます。コンビニ、公園、公共施設など、徒歩3分以内に2〜3カ所あれば安心です。夜間の動線も確認し、懐中電灯で照らしながら安全に行けるか確認しましょう。
車内で携帯トイレを使う場合は、プライバシー確保が重要です。車の後部座席にカーテンや布を張って簡易的な個室を作ります。100円ショップのつっぱり棒とカーテンで十分です。消臭袋は必須で、使用後はすぐに密閉できるよう準備しておきます。
また、水分摂取を控えてしまう人が多いのですが、これはエコノミークラス症候群のリスクを高めます。トイレ問題を理由に水を飲まないのは本末転倒です。むしろ「トイレに行く=外を歩く=運動になる」と前向きに捉え、積極的に水分補給しましょう。
問題3プライバシーと防犯の両立ジレンマ
車中泊避難では、プライバシーの確保と防犯の両立が難しい問題です。窓を完全に目隠しすると安心ですが、外の様子が見えず、逆に不安になります。特に余震が続く中では、外の状況が把握できないと恐怖が増します。
ベテラン避難者のテクニックは「段階的な目隠し」です。運転席と助手席の窓は完全には塞がず、薄手のカーテンやメッシュ素材で外が透けて見える程度にします。後部座席は完全にカバーして、そこを就寝スペースにするのです。
また、サンシェードは内側から貼るのがポイントです。外から見て「中に人がいる」ことがわかる程度の明かりは、実は防犯効果があります。完全に真っ暗だと「無人の車」と思われて侵入される可能性もあるのです。
夜間は車のドアロックは必須ですが、窓は数センチだけ開けて換気することも検討しましょう。防犯ブザーを枕元に置いておくことも安心につながります。複数台で固まって駐車することで、相互に見守り合える環境を作ることも有効です。
問題4子連れ車中泊の現実的な対応策
小さな子どもとの車中泊避難は想像以上に大変です。狭い車内で子どもが騒ぐ、夜泣きする、退屈する、トイレが近いなど、課題は山積みです。
体験者によると、最も重要なのは子どもの気を紛らわせる工夫です。スマートフォンやタブレットに子どもの好きな動画や絵本アプリを事前にダウンロードしておきます。充電のためにモバイルバッテリーやポータブル電源は必須です。
また、昼間は極力車外で過ごすことが重要です。避難所の敷地内を散歩したり、安全な場所で遊んだりして、子どもの体力を使わせます。そうすることで夜は疲れて眠ってくれる可能性が高まります。
おむつや着替えは多めに用意し、車内での着替えスペースを確保しておきます。車内が汚れることも想定して、ビニール袋やウェットティッシュは大量に準備しましょう。子どもの好きなお菓子やおもちゃも、心理的な安定のために重要です。
授乳が必要な赤ちゃんがいる場合は、後部座席にカーテンを設置してプライベート空間を作ります。哺乳瓶の消毒には、消毒液や使い捨てタイプの哺乳瓶が便利です。
問題5ペットとの避難で困る意外な問題
ペットと一緒の車中泊避難では、動物特有の問題が発生します。犬が夜中に吠える、猫が車内で暴れる、トイレの処理、ニオイの問題など、想定外のトラブルが起こります。
経験者のアドバイスでは、まず普段からペットを車に慣れさせておくことが重要です。週末のドライブなどで、車内で過ごす時間を徐々に増やしていきましょう。ペット用のキャリーケースやクレートも、事前に慣れさせておくと安心です。
ペットのトイレは、ペットシーツを多めに準備し、使用済みのものは密閉袋に入れて臭いを防ぎます。車内の換気も重要で、定期的に窓を開けて空気を入れ替えましょう。消臭スプレーも必須アイテムです。
犬の場合、日中は散歩でストレスを発散させることが重要です。ただし、災害時は迷子になるリスクが高いため、必ずリードをつけ、鑑札や迷子札の確認も怠らないでください。
また、ペットフードと水は最低1週間分準備しておきます。災害時はペット用の支援物資が後回しになることも多いため、飼い主の責任で十分な量を確保しておきましょう。
問題6食事と衛生管理の現実
災害時の車中泊では、食事と衛生管理が想像以上に困難です。手を洗う水がない、ゴミの処理ができない、歯磨きができないなど、日常では当たり前のことができません。
食事の工夫としては、ゴミが少ない食品を選ぶことが重要です。レトルト食品はパウチをそのまま捨てられるので便利ですが、容器が必要な食品は避けましょう。紙皿や割り箸を使えば、食器を洗う手間が省けます。
手指の衛生管理には、アルコール消毒ジェルが必須です。食事の前後、トイレの後など、こまめに使用します。ウェットティッシュも大量に準備し、手や顔を拭くだけでなく、車内の掃除にも使えます。
歯磨きは液体歯磨きや口腔ケア用のマウスウォッシュで代用できます。水がなくても使えるタイプを選びましょう。また、体を拭くためのボディシートも、爽快感が得られて気分転換になります。
ゴミの処理は意外と悩ましい問題です。車内にゴミを溜め込むと臭いと虫の発生源になります。大きめのゴミ袋を複数用意し、燃えるゴミ、燃えないゴミ、生ゴミなどを分別して保管します。避難所や指定場所のゴミ集積所が利用できるか確認しておきましょう。
問題7精神的ストレスとの戦い
車中泊避難の最大の敵は、実は精神的ストレスかもしれません。狭い空間、プライバシーの制約、先の見えない不安、余震への恐怖など、心理的負担は計り知れません。
体験者の多くが指摘するのは「孤独感」です。避難所にいれば周囲の人と情報交換したり励まし合ったりできますが、車中泊では孤立しがちです。意識的に外に出て、近くで車中泊している人や避難所の人とコミュニケーションを取ることが重要です。
ストレス解消法として効果的なのは、規則正しい生活リズムを維持することです。朝は決まった時間に起き、日中は外を歩き、夜は早めに休む。このリズムを守ることで、心理的な安定が得られます。
また、簡単なストレッチや深呼吸、好きな音楽を聴くなど、自分なりのリラックス方法を持っておくことも大切です。スマートフォンの充電を確保し、家族や友人と連絡を取り合うことも心の支えになります。
車種別・車中泊避難の実践テクニック
車の種類によって、車中泊のしやすさは大きく異なります。ここでは車種別の具体的なテクニックをご紹介します。
軽自動車での工夫
軽自動車は空間が限られているため、車中泊には向いていないと思われがちです。しかし、工夫次第で十分に対応できます。
ポイントは縦方向の活用です。前席を最大限前にスライドさせ、後部座席を倒すことで、斜めになりますが足を伸ばせるスペースが確保できます。頭を高くして足を低くする「半リクライニング」スタイルなら、意外と眠れるものです。
また、一人での避難なら助手席を倒して運転席から斜めに体を伸ばす方法もあります。身長が低い方や子どもなら、後部座席を倒して横になることも可能です。
軽自動車の場合、2人以上での車中泊は正直厳しいです。その場合は、大人と子どもで分かれて寝るか、交代で外のテントやタープで休むなどの工夫が必要になります。
ミニバン・ワンボックスでの最適配置
ミニバンやワンボックスは車中泊に最も適した車種です。シートアレンジの自由度が高く、複数人でも対応できます。
3列シート車の場合、2列目と3列目を倒してフルフラットにするのが基本です。多くの車種では完全フラットにはならず、多少の段差や傾斜が残りますが、マットやクッションで調整できます。
家族4人程度なら、横並びで寝ることができます。ただし、お互いの寝返りで起きてしまうこともあるため、寝袋を個別に用意するか、布団の間に荷物を挟んで仕切りを作ると良いでしょう。
荷物の配置も重要です。よく使うものは手の届く範囲に、使わないものは運転席や助手席の足元に収納します。天井のネットポケットも有効活用しましょう。
セダン・コンパクトカーの対応法
セダンやコンパクトカーは、トランクと車室が分かれているため、車中泊には向いていません。しかし、不可能ではありません。
前席を目いっぱい前にスライドさせ、後部座席を倒します。足元が狭いため、斜めに寝るか、膝を曲げて寝ることになります。長身の方には厳しいですが、短期間なら耐えられます。
体格の良い方や長期化が予想される場合は、車中泊にこだわらず避難所を検討した方が良いでしょう。無理をして体調を崩すことが最も避けるべき事態です。
誰も教えてくれない車中泊避難の盲点
窓の結露対策は必須
意外と見落とされがちなのが窓の結露です。特に冬場や気温差の大きい季節は、人の呼吸や体温で車内の湿度が上がり、窓ガラスに大量の結露が発生します。
結露を放置すると、シートや荷物が濡れるだけでなく、カビの原因にもなります。タオルを数枚用意し、朝起きたら窓の結露を拭き取る習慣をつけましょう。吸水性の高いマイクロファイバータオルが便利です。
また、就寝前に窓を数分間開けて換気し、車内の湿気を外に出すことも効果的です。除湿剤を車内に置いておくのも一つの方法です。
バッテリー上がりのリスク
災害時は情報収集のためにラジオやスマートフォンの充電で車のバッテリーを使う機会が増えます。エンジンを切った状態でシガーソケットから電源を取り続けると、バッテリーが上がるリスクがあります。
予防策は、ポータブル電源を用意することです。車のバッテリーに頼らず、独立した電源があれば安心です。また、エンジンをかけずに使えるUSB電源付きのソーラーパネルも、長期化する場合には有効です。
もしバッテリーが上がってしまった場合に備えて、ブースターケーブルや携帯型のジャンプスターターを車内に常備しておくことも重要です。
近隣との関係構築
車中泊避難では、周囲の車や近隣住民との関係も重要です。特に民家の近くで車中泊する場合、住民の方への配慮が必要です。
できれば昼間のうちに近くの住民の方に挨拶をしておきましょう。「災害で避難してきました。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」と一言伝えるだけで、印象が大きく変わります。
エンジン音、ドアの開閉音、話し声など、夜間の騒音には特に注意が必要です。お互いに譲り合いの精神を持つことで、トラブルを避けられます。
ぶっちゃけこうした方がいい!
ここまで理論的な対策や準備方法をお伝えしてきましたが、正直に言えば、完璧を目指す必要はありません。災害時は誰もが初めての状況に直面し、試行錯誤しながら対応するものです。
個人的には、準備の8割は「水、食料、トイレ、暖かい寝具」だけで十分だと考えています。高価な車中泊専用グッズを揃える必要はありません。家にあるバスタオル、毛布、クッション、ペットボトルの水、レトルト食品、これだけで最初の3日間は乗り切れます。
エコノミークラス症候群の予防も、難しく考える必要はありません。「4時間に1回は車から降りて3分歩く」「寝る前と起きた後に足首をグルグル回す」「水をこまめに飲む」、これだけです。完璧な姿勢で寝ることよりも、定期的に体を動かすことの方がはるかに重要です。
一酸化炭素中毒についても、シンプルです。「エンジンは基本的に切る。寒ければ着込む。暑ければ涼しい場所に移動する」これだけで95%のリスクは回避できます。
そして何より大事なのは、車中泊避難にこだわりすぎないことです。体調が悪い、眠れない、精神的に限界、そう感じたら無理せず避難所に移りましょう。車中泊は手段であって目的ではありません。
プライバシーも大切ですが、人とのつながりはもっと大切です。避難所に行けば温かい食事や医療支援、正確な情報が得られます。「車中泊の方が楽だから」と孤立するのではなく、状況に応じて柔軟に選択することが、災害を生き延びる上で最も重要なのです。
結局のところ、災害時に必要なのは立派な装備ではなく、柔軟な思考と助け合いの心です。完璧な準備をするよりも、「とりあえず家にあるもので3日間しのぐ」というマインドセットの方が、実は災害時には役立ちます。高価なアイテムを買い揃えることに時間を使うよりも、今すぐ車に水とタオルとブランケットを積んでおく。それだけで十分なんです。
そして最後に、近所の人と日頃から顔見知りになっておくこと。これが最強の防災対策です。災害時に「あの人大丈夫かな」と気にかけてくれる人がいる、それだけで生存率は格段に上がります。車中泊の準備も大切ですが、人とのつながりへの投資も忘れないでください。
車中泊避難に関するよくある質問
車中泊避難は何日くらいまで安全にできますか?
一般的な乗用車での車中泊避難は、安全性を考慮すると最大でも3日程度が限度とされています。それ以上長期化する場合は、避難所への移動を検討すべきです。特に高齢者や持病のある方、小さなお子様は、できるだけ早めに避難所や福祉避難所に移動することをおすすめします。車中泊が長期化すると、エコノミークラス症候群のリスクが高まり、精神的なストレスも蓄積します。自治体が設置する車中泊避難場所は最大3日間程度の開設を想定しているところが多いのも、この理由からです。
エンジンをかけたまま寝てはいけないのですか?
基本的にエンジンをかけたままの車中泊は推奨されません。理由は複数あります。第一に一酸化炭素中毒のリスクです。特に冬季の降雪時はマフラーが雪に埋もれて排気ガスが車内に逆流する危険があります。第二に燃料の無駄遣いです。災害時はガソリンの供給が途絶える可能性があり、貴重な燃料は慎重に使う必要があります。第三に騒音による周囲への迷惑です。住宅地などでは特に配慮が必要です。どうしても命の危険を伴う寒さや暑さの場合は、定期的に換気をしながら短時間だけエンジンをかけるという方法もありますが、基本はエンジンを切り、電気毛布やポータブル電源を活用した対策を優先してください。
どのような人は車中泊避難を避けるべきですか?
エコノミークラス症候群を発症しやすい血栓リスクの高い方は車中泊を避けるべきです。具体的には、高齢者、肥満の方、妊娠中の方、経口避妊薬を服用している方、過去に血栓症の既往がある方などです。また、心臓病や呼吸器疾患などの持病がある方も、車中泊は体への負担が大きいため避難所や福祉避難所を優先すべきです。乳幼児も体温調節機能が未発達なため、車中泊は推奨されません。医療機関の専門家は、高齢者の車中泊について「誤嚥性肺炎や不活発病のリスクがあり、予防策がない」と警鐘を鳴らしています。周囲の人も、これらに該当する方がいる場合は、なるべく避難所に連れて行くことを考えるべきです。
車中泊避難場所はどこで確認できますか?
お住まいの自治体のホームページで確認できます。多くの自治体が「車中泊避難場所」「車両避難場所」などの名称で情報を公開しています。また、内閣府の防災情報ページや各都道府県の防災ポータルサイトでも情報が得られます。災害発生時には、自治体の公式SNSアカウント(LINE、X、Facebook)でもリアルタイムに開設情報が発信されます。事前に自治体の公式アカウントをフォローしておくことをおすすめします。注意点として、すべての駐車場が車中泊避難場所として指定されているわけではありません。民間企業の駐車場でも、災害時のみ提供される場所もあります。平時から最寄りの車中泊避難場所を2〜3カ所リストアップし、実際に現地を確認しておくと安心です。
車中泊避難時の食事はどうすればよいですか?
車中泊避難時の食事は、基本的に非常食と備蓄水で賄います。最低3日分、できれば1週間分の準備が推奨されます。調理の必要がないレトルト食品、缶詰、栄養補助食品、アルファ米などが適しています。車内での調理は一酸化炭素中毒のリスクがあるため、ガスコンロの使用は避けてください。どうしても温かい食事が必要な場合は、車外で調理するか、電気式のポータブル調理器具を使用しましょう。ポータブル電源があれば、電気ケトルでお湯を沸かしたり、電子レンジで食品を温めたりすることも可能です。また、避難所に行けば支援物資の配布を受けられる場合もあります。車中泊避難者向けのドライブスルー型の配布ステーションを設置する自治体も増えています。食事と同様に重要なのが水分摂取です。エコノミークラス症候群予防のため、こまめな水分補給を心がけてください。
まとめ正しい知識と準備で命を守る車中泊避難を
災害時の車中泊避難は、プライバシーの確保や感染症対策、移動の自由度など多くのメリットがある一方で、エコノミークラス症候群、一酸化炭素中毒、季節による健康リスクなど命に関わる危険も伴います。
重要なのは、これらのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることです。4〜5時間ごとの運動と水分補給、エンジンを切ることによる一酸化炭素中毒の予防、そして季節に応じた温度管理。これらの基本を守ることで、車中泊避難のリスクは大幅に軽減できます。
また、事前の準備も欠かせません。着圧ソックス、携帯トイレ、ポータブル電源、一酸化炭素チェッカーなどの必需品を車内に常備し、燃料は常に満タンにしておく習慣をつけましょう。家族で避難計画を話し合い、実際に車中泊を体験してみることも有効です。
ただし、すべての人に車中泊避難が適しているわけではありません。高齢者、持病のある方、血栓リスクの高い方、乳幼児などは、できるだけ避難所や福祉避難所を利用することをおすすめします。
2026年1月の能登半島地震、そして過去の熊本地震や東日本大震災の教訓から、私たちは多くのことを学びました。災害はいつ起こるかわかりません。今日からできる準備を始め、いざという時に自分と家族の命を守れるようにしておきましょう。
正しい知識と十分な準備があれば、車中泊避難は安全で有効な避難手段となります。この記事で紹介した対策を実践し、万が一の災害に備えてください。


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