交通事故は突然やってきます。どんなに気をつけていても、一瞬の不注意やアクシデントで人をひいてしまう可能性は誰にでもあるのです。パニックになり、頭が真っ白になり、その場から逃げ出したくなる衝動に駆られる方も少なくありません。しかし、事故直後の対応を誤ると、本来は軽く済んだはずの責任が何倍にも重くなってしまいます。この記事では、万が一人をひいてしまった時に取るべき正しい対応と、絶対に避けるべき行動について、法律の専門知識と最新の情報を交えて詳しく解説していきます。
- 人をひいてしまった直後は救護・警察への通報・危険防止の3つの義務を最優先で実行すること
- 逃げると最大10年の拘禁刑と免許取消になり人生が大きく変わる可能性がある
- 2025年6月の法改正により懲役刑が拘禁刑に変更され刑事責任の内容が更新されている
- 人をひいてしまった直後の最優先対応とは?
- 警察への届出は絶対に必要!その理由とは?
- 危険防止措置を忘れずに実施しよう
- 刑事責任はどのようなものか?
- 行政責任としての免許の点数と処分
- 民事責任としての損害賠償
- 逮捕される可能性はどれくらいあるのか?
- 弁護士に相談するメリットとタイミング
- 業務中に人をひいてしまった場合の特殊な責任
- 保険会社への連絡は事故直後に必ず行うべき理由
- 事故現場での相手とのコミュニケーションで絶対に言ってはいけないこと
- 夜間や高速道路での事故対応はここが違う
- 警察の実況見分でやってはいけない3つのミス
- 事故後の車の処理で知っておくべき実践知識
- 事故加害者になった時の精神的ケアも重要
- ドライブレコーダーの映像は誰に見せるべきか?
- 物損事故として処理された後に痛みが出てきた場合の対処法
- 実は知らない人が多い自動車保険の正しい使い方
- 実際によくある勘違いと正しい知識
- 救護義務を果たした後の具体的な次のステップ
- ぶっちゃけこうした方がいい!
- 人をひいてしまった際に関する疑問解決
- まとめ
人をひいてしまった直後の最優先対応とは?

車のイメージ
人をひいてしまった瞬間、誰もがパニックに陥ります。しかし、ここで冷静さを保ち、適切な対応を取ることが何よりも重要です。道路交通法第72条では、交通事故を起こした運転者に対して3つの義務を課しています。
まず最初に行うべきは車両の停止です。事故を起こしたら、すぐに車を安全な場所に停車させてエンジンを切りましょう。この時、後続車の妨げにならない場所を選ぶことも大切です。絶対にその場から逃げてはいけません。逃げてしまうと「ひき逃げ」として扱われ、10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という非常に重い刑罰が科される可能性があります。さらに免許の違反点数が39点から57点も加算され、一発で免許取消となってしまいます。
次に行うべきは被害者の救護です。これは道路交通法で定められた「救護義務」であり、違反すると5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。被害者のもとへ駆け寄り、意識や呼吸の有無を確認してください。出血がある場合は止血を試み、必要に応じて救急車を呼びます。ただし、意識がない場合や頭部・頸部に出血やしびれがある場合は、むやみに動かさないようにしましょう。不用意に動かすと症状が悪化する恐れがあるためです。救急車の要請時に救急隊員に指示を仰ぐのも賢明な判断といえます。
警察への届出は絶対に必要!その理由とは?
被害者の救護と同時に、必ず警察への届出を行ってください。これも道路交通法で定められた義務であり、報告義務違反をすると3ヶ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科される可能性があります。事故の内容が軽微であっても、また相手が「警察を呼ばなくていい」と言っても、必ず警察に連絡しなければなりません。
警察に連絡する際は、事故が発生した場所、事故の状況、負傷者の人数と状態、破損した物などを伝えます。現場で示談をしてしまうケースがありますが、これは絶対に避けるべきです。後になって思わぬ症状が出てきたり、損害額が当初の見積もりと大きく異なったりすることがあるためです。
警察に届け出ることで、警察は「実況見分調書」を作成します。この書類は後の示談交渉や裁判において、事故の状況や過失割合を決める重要な証拠となります。また、警察への届出がないと、各都道府県の交通安全運転センターで「交通事故証明書」が発行されません。交通事故証明書は保険金の請求時に必要となる重要な書類です。人身事故の場合、事故発生から5年が経過すると原則として交通事故証明書は交付されなくなるため、事故直後に必ず警察に届け出ることが重要です。
危険防止措置を忘れずに実施しよう
人をひいてしまった場合、被害者の救護と警察への届出に気を取られがちですが、危険防止措置も忘れてはいけません。これは道路交通法で定められた義務であり、違反すると1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処される可能性があります。
具体的には、車内にある発煙筒や三角停止表示板を使用して、後続車などに事故が発生していることを知らせます。事故現場に他の車が突っ込んでくる二次被害を防ぐため、危険物を片付けたり、後続車の注意を促したりすることが必要です。最近ではドライブレコーダーを設置している車も増えているため、事故の状況を記録している可能性もあります。事故現場の写真を撮影しておくことも、後の示談交渉や裁判で役立つことがあります。
相手方の情報も確認しておきましょう。相手の住所、氏名、電話番号などの連絡先を確認し、相手が加入している自賠責保険や自動車保険会社の情報も控えておきます。また、事故の目撃者がいる場合は、その方の連絡先も確認しておくと後々役立ちます。
刑事責任はどのようなものか?
人身事故を起こすと、刑事責任を問われる可能性があります。2025年6月1日から施行された改正刑法により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」が統一され、「拘禁刑」という新しい刑罰が創設されました。これは受刑者の改善更生を重視した制度変更であり、2026年1月現在、この新しい制度の下で刑事責任が問われることになります。
前方不注意やスピード違反などの一般的な過失により人身事故を起こした場合、過失運転致死傷罪が適用されます。この罪の法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。ただし、被害者の怪我が軽い場合は、情状により刑が免除されることもあります。実際には、被害者の怪我の程度によって量刑が大きく異なります。軽傷の場合は不起訴や罰金刑で終わることが多く、罰金の相場は30万円から50万円程度です。一方、死亡事故の場合は、初犯であっても1年から3年程度の拘禁刑が科されることが一般的で、執行猶予が付くかどうかは遺族への対応や過失の程度によって変わってきます。
飲酒運転や著しい暴走行為などによって事故を起こした場合は、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。この罪は過失運転致死傷罪よりもはるかに重く、負傷の場合は15年以下の拘禁刑、死亡の場合は1年以上の有期拘禁刑が科されます。危険運転致死傷罪は、自分の運転が危険であると認識していた場合に成立するため、故意性が重視されます。
酒気帯び運転の場合、呼気中から一定値以上のアルコールが検出されると3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となります。さらに、アルコールの影響で正常な運転ができない状態であれば「酒酔い運転」となり、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科せられます。
行政責任としての免許の点数と処分
人身事故を起こすと、刑事責任だけでなく行政責任も問われます。行政責任とは、運転免許の違反点数の加算や免許停止、免許取消などの処分のことです。
運転免許の違反点数は、基礎点数と付加点数の合計で決まります。基礎点数は道路交通法違反の内容により決定され、人身事故の場合は一般的に「安全運転義務違反」として2点が適用されます。付加点数は、事故発生原因や被害者の怪我の程度に応じて加算されます。被害者の怪我が重ければ重いほど、また加害者の過失が大きければ大きいほど、付加点数は高くなります。
過去3年間の累積違反点数が6点から14点になると免許停止、15点以上になると免許取消となります。特にひき逃げの場合、救護義務違反の点数は35点と非常に高く、それだけで免許が取り消しになってしまいます。免許停止期間は30日から180日まであり、講習を受けることで期間が短縮される場合もあります。免許取消の場合は、欠格期間が終了するまで新たな免許を取得することができません。
反則金についても知っておく必要があります。安全運転義務違反による反則金の額は、運転していた車両の種類によって異なります。大型車で12,000円、普通車で9,000円、二輪車で7,000円、原付で6,000円が目安となっています。
民事責任としての損害賠償
刑事責任や行政責任とは別に、民事責任も発生します。民事責任とは、被害者に与えた損害を賠償する責任のことです。不法行為に基づく損害賠償は民法第709条で規定されており、加害者の不法行為によって生じた損害を補填することになります。
損害賠償の内容には、治療費、通院交通費、休業損害などの積極損害のほか、慰謝料や逸失利益も含まれます。慰謝料は被害者の精神的苦痛を償うために支払われるもので、被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料は2,000万円から2,800万円、後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料は110万円から2,800万円となります。入通院した場合の慰謝料は、通常1ヶ月程度入院した場合に50万円程度、3ヶ月程度通院した場合は70万円程度が相場です。
逸失利益は、交通事故による後遺障害や死亡がなければ得られたであろう収入のことです。損害賠償の費目の中でも金額が大きくなるものであり、多い場合には数千万円から1億円を超える金額になることもあります。特に若い被害者や高収入の被害者の場合、逸失利益は非常に高額になる傾向があります。
自動車保険に加入している場合は、保険会社が示談交渉を代行してくれます。しかし、過失割合や損害額について争いがある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。特に被害者側が弁護士を立てている場合、加害者側も弁護士に依頼した方が適切な示談ができることが多いです。
逮捕される可能性はどれくらいあるのか?
人身事故を起こした場合、最大の関心事は「自分が逮捕されるのか」ということでしょう。実際のところ、交通事故の多くは過失により生じるものであるため、被害者の怪我の程度が軽く運転に悪質性がない場合には、基本的には在宅事件として扱われます。在宅事件とは、身柄を拘束されずに捜査が進められる事件のことです。
しかし、以下のような場合には逮捕される可能性が高くなります。飲酒運転をしていた場合、相手が亡くなったり命に関わるような大怪我をした場合、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断された場合などです。飲酒等もなく、双方に大きな怪我もない場合や、怪我自体は大きなものでも相手の過失が特に大きいような場合には、逮捕についてはそこまで神経質にならなくてもよいでしょう。
逮捕された場合、まず逮捕から72時間後に一つの転換点が来ます。このタイミングで警察と検察は、あなたを釈放するか勾留するかを決めます。勾留されると、まずは10日、最長でさらに10日、合計で最大20日間警察などの留置施設に入れられることになります。この最大23日の身柄拘束が終わるまでに、検察官はあなたを起訴するかどうかを決めなければなりません。
起訴された場合、略式裁判という書面上の裁判手続か、法廷での刑事裁判を受けることになります。略式裁判は100万円以下の罰金刑を科す場合に用いられる簡易な手続で、正式な裁判よりも迅速に処理されます。一方、法廷での刑事裁判になると、拘禁刑が科される可能性があります。
統計データによると、過失運転致死傷等で不起訴となった割合は83.7パーセントとなっており、8割以上の事故加害者は刑事裁判に進まず不起訴で終わっています。これは、多くの交通事故が軽微なものであることや、被害者との示談が成立していることなどが理由です。
弁護士に相談するメリットとタイミング
人身事故を起こしてしまった場合、弁護士に相談することには大きなメリットがあります。特に身柄事件となった場合、最大で20日間外部と連絡を取ることができず、学校や会社などの社会生活に大きな影響を与えることが予想されます。弁護士は早期の身柄解放に向けて弁護活動を行うことができます。
逮捕された初期の段階から弁護士に相談することで、今後の処分や裁判の見通しを立てることができます。取調べへのアドバイスや、少しでも軽い処分を獲得するための選択肢も広がります。さらに、事案によっては、弁護士が独自に事故関係の証拠を収集し保全することもできます。
被害者との示談交渉も、弁護士に依頼することで円滑に進むことが多いです。示談が成立すると、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。また、起訴された場合でも、示談が成立していることは量刑を軽くする大きな事情となります。弁護士は法律の専門家として、適切な示談金の額を算定し、被害者側との交渉を代行してくれます。
事故を起こした際には、現場から知り合いの弁護士に連絡をして指示を仰ぐことも一つの方法です。パニックになっている状況で、法律の専門家からアドバイスをもらうことで、冷静な判断ができるようになります。特に初めて交通事故を起こした方にとって、弁護士のサポートは非常に心強いものとなるでしょう。
業務中に人をひいてしまった場合の特殊な責任
業務中に人身事故を起こしてしまった場合、ドライバーだけでなく会社も責任を問われます。業務中に従業員が事故を起こすと、従業員が仕事中に不法行為をしたと見なされ、会社に使用者責任が発生します。さらに、会社名義の車で事故を起こしているため、会社には運行供用者責任も発生します。
使用者責任とは、会社が雇っている従業員が事故などの不法行為で相手に損害を与えた時に、会社が責任を負うものです。運行供用者責任は、自動車の運行によって利益を得ている人が、自動車が起こした事故の責任を負うものです。会社は自動車の運行を支配して利益を得ているため、運行供用者に該当します。
会社名義の車で従業員が事故を起こすと、会社と運転者である従業員の連帯責任になります。連帯責任とは、双方が100パーセントの責任を負うことを指しており、双方の負担割合は存在しません。被害者は会社にも事故を起こした従業員にも全額の支払い請求が可能で、会社と従業員の負担割合については話し合いで決定しなければなりません。
業務時間外に会社名義の車で事故を起こした場合も、会社に運行供用者責任が発生します。しかし、従業員が無断かつ私的に社用車を利用した場合は、会社の利益につながっていないため、運行供用者責任は発生しません。また、業務時間外の事故は使用者責任も発生しないのが原則です。
通勤途中の事故については、業務との関連性がある場合は業務中と判断されるため、使用者責任や運行供用者責任が発生します。しかし、通勤中や帰宅中に通勤ルートを外れて私用を済ませた場合などは、業務との関連性がなくなるので、会社の責任は問われません。
保険会社への連絡は事故直後に必ず行うべき理由

車について疑問を持っている人のイメージ
多くの方が見落としがちですが、被害者の救護や警察への通報と同じくらい重要なのが保険会社への速やかな連絡です。実は、自動車保険の約款には「事故発生後、遅滞なく保険会社に通知すること」という条項が含まれており、これを怠ると保険金が支払われない可能性があります。
事故現場から落ち着いたら、できるだけ早く保険会社に連絡しましょう。24時間365日対応の事故受付センターを設けている保険会社がほとんどです。保険会社に連絡することで、事故対応のプロからアドバイスを受けられます。相手への対応方法、病院への付き添いの必要性、レッカー手配など、具体的な指示をもらえるため、パニック状態でも適切な対応ができます。
保険会社に伝えるべき情報は、事故の日時と場所、相手の氏名と連絡先、相手の保険会社情報、事故の状況、怪我の有無などです。できれば事故現場で相手の保険証券や免許証の写真を撮らせてもらうと、後の手続きがスムーズになります。また、自分の保険証券番号も控えておきましょう。
特に注意したいのは、人身傷害保険の特約が付いているかどうかの確認です。人身傷害保険に加入していれば、相手が直ちに治療費の支払いに応じない場合でも、自分の保険から払い出しを受けることができます。事故直後は相手の保険会社との連絡がつかないことも多いため、この特約の有無は非常に重要です。
事故現場での相手とのコミュニケーションで絶対に言ってはいけないこと
事故現場でのコミュニケーションは非常にデリケートです。多くの加害者が犯しがちなミスは、その場で過度に謝罪してしまうことです。「すべて私が悪いです」「どんな賠償でもします」といった発言は、後の過失割合の交渉で不利になる可能性があります。
もちろん、人をひいてしまったことへの謝罪は人間として当然ですが、「私が100パーセント悪いです」といった過失割合を認めるような発言は避けるべきです。事故の状況を冷静に確認しないまま責任を全面的に認めてしまうと、実際には相手にも過失があったとしても、後から主張することが難しくなります。
適切な対応としては、「お怪我は大丈夫ですか」「救急車を呼びます」「警察に連絡します」といった救護と手続きに関する発言に留めましょう。相手から「どうしてくれるんだ」と詰め寄られても、「保険会社と相談して適切に対応させていただきます」と冷静に答えることが重要です。感情的になって言い争いをすると、後の示談交渉がさらに難航します。
また、その場で金銭の話をすることも絶対に避けてください。相手から「今ここで10万円払ってくれれば警察に届けない」といった提案をされても、絶対に応じてはいけません。これは事故の不申告という違法行為に加担することになり、後で相手から追加の金銭を要求されるケースも多々あります。
夜間や高速道路での事故対応はここが違う
夜間に人をひいてしまった場合、昼間とは異なる対応が必要になります。最も重要なのは視認性の確保です。ハザードランプを点灯させることはもちろん、車内にある懐中電灯や携帯電話のライト機能を活用して、事故現場を照らしましょう。夜間は後続車からの発見が遅れやすく、二次被害のリスクが高まります。
発煙筒の使用も夜間は特に効果的です。発煙筒は車両に必ず備え付けられており、使用方法も簡単です。キャップを外して本体をこすると点火します。発煙筒の燃焼時間は約5分から10分なので、警察が到着するまでに複数本使用することもあります。三角停止表示板も必ず設置しましょう。夜間は50メートル以上後方に設置することが推奨されています。
高速道路での事故はさらに危険性が増します。高速道路で人をひいてしまった場合、まず自分と被害者の安全確保が最優先です。可能であれば、車を路側帯や非常駐車帯に移動させます。ただし、被害者が車道上で動けない状態の場合、無理に動かすと症状が悪化する恐れがあるため、119番に連絡して指示を仰ぎましょう。
高速道路では、自分も二次被害に遭わないよう細心の注意が必要です。車外に出る際は、必ず車の後方を確認し、ガードレールの外側に避難することを検討してください。高速道路では車両が高速で走行しているため、事故現場に別の車が突っ込んでくるリスクが非常に高いのです。
高速道路の非常電話を使用して通報することも一つの方法です。非常電話は約1キロメートルごとに設置されており、位置情報が自動的に通報されるため、正確な場所を伝えやすいというメリットがあります。
警察の実況見分でやってはいけない3つのミス
警察が到着すると実況見分が行われます。この実況見分での対応が、後の過失割合や刑事処分に大きく影響します。多くの人が犯す最初のミスは、記憶が曖昧なのに適当に答えてしまうことです。
事故直後は興奮状態にあり、記憶が曖昧になっていることがよくあります。「よく覚えていないけど、多分こうだったと思います」と曖昧に答えてしまうと、後でドライブレコーダーの映像などで事実と異なることが判明しても、訂正が困難になります。覚えていないことは正直に「覚えていません」と答えることが重要です。
2つ目のミスは、警察の誘導尋問に乗ってしまうことです。警察官も人間なので、先入観を持って質問することがあります。「スマホを見ていたんじゃないですか」「スピードを出しすぎていたんじゃないですか」といった誘導的な質問に対して、実際はそうでなくても「そうかもしれません」と曖昧に答えてしまうと、実況見分調書にそのまま記載されてしまいます。
3つ目のミスは、実況見分調書の内容を確認せずにサインしてしまうことです。実況見分調書は非常に重要な書類で、示談交渉や裁判で過失割合を決める際の重要な証拠となります。警察官が作成した内容をよく読んで、自分の記憶や認識と異なる部分がないか確認してからサインしましょう。間違いがあれば、その場で訂正を求めることができます。
また、事故現場の写真を自分のスマートフォンでも撮影しておくことを強くお勧めします。車両の損傷状況、スリップ痕、信号の状態、道路標識など、できるだけ多くの角度から撮影しましょう。警察の写真だけでは不十分な場合もあり、自分で撮影した写真が後で役立つことがあります。
事故後の車の処理で知っておくべき実践知識
人をひいてしまった後、自分の車をどうするかという問題も発生します。車が自走可能な状態であれば、警察の許可を得てから自分で移動させることができます。しかし、車が動かない状態の場合はレッカー車の手配が必要です。
多くの自動車保険にはロードサービスが付帯しており、無料でレッカー車を手配してくれます。保険会社に連絡すれば、提携しているレッカー会社を紹介してもらえます。ただし、無料でのレッカー距離には制限があることが多く、通常は15キロメートルから50キロメートル程度です。それを超える距離は追加料金が発生します。
レッカー車で車を運ぶ先は、通常は修理工場か自宅です。保険会社が指定する修理工場に運べば、見積もりから修理、保険金の請求までスムーズに進みます。ただし、自分が普段利用している修理工場がある場合は、そちらに運ぶこともできます。
事故車の修理費用が車両価格を超える場合、保険会社は「全損扱い」として修理ではなく車両の時価額を補償することがあります。この場合、車を手放すか、自己負担で修理するかを選択することになります。車両保険に入っていれば、自分の車の修理費用も補償されますが、車両保険を使うと翌年の保険料が上がることも考慮する必要があります。
事故加害者になった時の精神的ケアも重要
人をひいてしまった加害者は、被害者ほどではないにせよ、大きな精神的ショックを受けます。多くの加害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされています。事故の光景がフラッシュバックしたり、運転が怖くなったり、不眠や食欲不振に陥ったりすることもあります。
このような症状が出た場合、一人で抱え込まずに専門家に相談することが重要です。精神科や心療内科を受診することをお勧めします。また、家族や信頼できる友人に話を聞いてもらうことも効果的です。特に死亡事故や重傷事故の加害者になった場合、罪悪感に押しつぶされそうになることもありますが、自分自身のメンタルヘルスも大切にしてください。
加害者の家族も大きな影響を受けます。経済的な負担はもちろん、近所の目や世間体を気にして精神的に追い詰められる家族もいます。家族全体でカウンセリングを受けることも検討してください。一部の自治体では、交通事故加害者とその家族のための相談窓口を設けているところもあります。
また、職場への報告も必要になることがあります。特に人身事故で逮捕されたり、免許停止になったりした場合、仕事に影響が出ます。正直に状況を説明し、理解と協力を求めることが重要です。隠し立てすると、後でより大きな問題になる可能性があります。
ドライブレコーダーの映像は誰に見せるべきか?
ドライブレコーダーを搭載している車が増えていますが、事故後の映像の扱いには注意が必要です。ドライブレコーダーの映像は、まず警察に提供するのが基本です。警察は客観的な証拠として映像を実況見分調書の参考にします。
しかし、事故現場で相手から「ドライブレコーダーの映像を見せてくれ」と言われた場合、すぐに見せる必要はありません。その場で見せてしまうと、相手が「これは不利だから消してくれ」と要求してきたり、逆に自分に不利な部分だけを記憶されたりする可能性があります。「警察と保険会社に提供しますので、そちらでご確認ください」と答えるのが適切です。
ドライブレコーダーの映像は、事故直後に必ずバックアップを取っておきましょう。多くのドライブレコーダーは上書き記録されるため、時間が経つと事故の映像が消えてしまう可能性があります。SDカードを取り出して保管するか、パソコンにコピーしておくことをお勧めします。
また、ドライブレコーダーの映像が自分に不利な内容だった場合でも、隠蔽や改ざんは絶対にしてはいけません。これは証拠隠滅罪という別の犯罪になります。不利な証拠であっても、正直に提出することが結果的に有利に働くことも多いのです。
物損事故として処理された後に痛みが出てきた場合の対処法
事故直後は興奮状態でアドレナリンが出ているため、痛みを感じにくくなっています。その場では「大丈夫です」と言って物損事故として処理したものの、翌日や数日後に首や腰の痛みが出てくることはよくあります。この場合の対処法を知っておくことは非常に重要です。
まず、すぐに病院を受診して診断書をもらいましょう。診断書には「交通事故による受傷」と明記してもらうことが重要です。そして、その診断書を持って警察署に行き、物損事故から人身事故への切り替えを申請します。事故から時間が経過していても、医師の診断書があれば切り替えは可能です。
ただし、事故から1週間以上経過すると、警察は「事故と症状の因果関係が不明」として人身事故への切り替えを認めないことがあります。できるだけ早く、遅くとも1週間以内には病院を受診することをお勧めします。
人身事故に切り替えることで、相手に対して治療費や慰謝料を請求することができます。物損事故のままでは、人的被害に対する補償を受けることが難しくなります。また、警察が実況見分調書を作成してくれるため、過失割合の交渉でも有利になります。
実は知らない人が多い自動車保険の正しい使い方
自動車保険に加入していても、その内容を正確に理解している人は意外と少ないものです。人身事故を起こした場合、対人賠償保険が使われます。これは相手の怪我や死亡に対する補償をする保険で、多くの場合「無制限」に設定されています。無制限とは、補償額に上限がないという意味で、億単位の賠償責任が発生しても保険でカバーされます。
一方、自分の怪我に対しては人身傷害保険が使われます。これは自分の過失割合に関係なく、自分の保険から補償を受けられる保険です。例えば、自分の過失が30パーセントの事故でも、治療費や休業損害の全額を自分の保険から受け取ることができます。
保険を使うべきかどうかの判断も重要です。軽微な物損事故の場合、保険を使わずに自己負担で修理した方が、翌年以降の保険料が上がらないため経済的に有利なこともあります。しかし、人身事故の場合は、必ず保険を使うべきです。人的被害の補償額は予想以上に高額になることが多く、自己負担では対応できません。
また、弁護士特約が付いている場合は、積極的に利用しましょう。弁護士特約を使えば、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。自己負担なしで弁護士に依頼できるため、示談交渉や刑事手続きで有利に進めることができます。弁護士特約を使っても、翌年の保険料は上がりません。
実際によくある勘違いと正しい知識
人身事故に関して、多くの人が勘違いしている点がいくつかあります。最も多い勘違いは、「軽い接触だから警察に届けなくても大丈夫」というものです。実際には、どんなに軽微な事故でも警察への届出は法律で義務付けられています。
また、「相手が『警察を呼ばないでくれ』と言っているから呼ばない」というのも大きな間違いです。相手が警察を呼びたくない理由は様々ですが、無免許運転だったり、飲酒運転だったり、何か後ろめたいことがある可能性もあります。相手の事情に配慮して警察を呼ばないと、自分が報告義務違反で処罰される可能性があります。
「自賠責保険に入っているから大丈夫」という勘違いも危険です。自賠責保険は最低限の補償しかカバーしておらず、死亡事故で3,000万円、後遺障害で最大4,000万円、傷害で120万円までしか補償されません。重大な人身事故の場合、賠償額が数千万円から億単位になることもあり、自賠責保険だけでは全く不足します。
「事故を起こしたら必ず逮捕される」という思い込みも誤りです。実際には、軽微な人身事故の場合、逮捕されずに在宅事件として処理されることがほとんどです。ただし、飲酒運転や死亡事故、ひき逃げなどの悪質なケースでは逮捕される可能性が高くなります。
救護義務を果たした後の具体的な次のステップ
救護義務、報告義務、危険防止措置を果たした後、事故現場を離れる際にも注意点があります。警察から「帰っていいですよ」と言われるまでは、勝手に現場を離れてはいけません。警察の聴取が終わらないうちに現場を離れると、ひき逃げと見なされる可能性があります。
事故現場を離れる許可が出たら、自宅に戻ってからすぐに事故の記録を残しましょう。事故の日時、場所、状況、相手の情報、目撃者の情報、警察官の名前と所属などを詳しく記録しておきます。時間が経つと記憶が曖昧になるため、できるだけ早く記録することが重要です。
また、事故後24時間以内に病院を受診することをお勧めします。加害者自身も軽い怪我をしていることがありますが、興奮状態で気づいていないことがあります。念のため受診して、異常がないか確認してもらいましょう。診断書をもらっておけば、後で症状が悪化した場合にも対応できます。
家族にも事故のことを正直に話しましょう。隠し立てすると、後で警察から連絡が来たときに家族が驚いてしまいます。また、家族の精神的サポートも重要です。一人で抱え込まず、家族に相談しながら対応を進めることが大切です。
会社にも連絡する必要があります。特に業務中の事故であれば、すぐに上司に報告してください。プライベートの事故でも、刑事手続きで裁判所に出頭する必要が出てくる可能性があるため、早めに報告しておいた方が無難です。
ぶっちゃけこうした方がいい!
ここまで法律的な義務や正式な手続きについて詳しく解説してきましたが、正直に言うと、事故直後にこれだけのことを完璧にこなすのは現実的には難しいです。パニックになっている状態で、救護して、警察呼んで、保険会社に連絡して、写真撮って、相手の情報確認して…なんて、頭が真っ白になりますよね。
個人的には、事故を起こしたら「119、110、保険会社」の順番で電話する、これだけ覚えておけばいいと思います。まず被害者の命を守る、次に警察に届け出る、そして保険会社に相談する。この3つさえ押さえておけば、後は専門家が指示してくれます。
特に保険会社への連絡は本当に重要で、事故対応のプロが電話口で「次は何をしてください」と具体的に指示してくれます。一人で判断しようとせず、プロに頼る。これが一番確実で楽な方法です。保険料払ってるんだから、遠慮なく使い倒しましょう。
もう一つぶっちゃけると、ドライブレコーダーは絶対につけておいた方がいいです。今は1万円前後で十分な性能のものが買えます。事故が起きたときに「言った言わない」でもめるのは本当にストレスですし、客観的な証拠があるだけで示談交渉がスムーズに進みます。自分を守るための最低限の投資だと思って、まだつけていない人は今日にでも買いましょう。
そして最後に、これは声を大にして言いたいのですが、絶対に逃げないこと。怖くなって逃げたくなる気持ちはわかります。でも逃げた瞬間に、あなたの人生は本当に終わります。10年の拘禁刑、免許取消、高額の賠償金、社会的信用の失墜。軽い気持ちで逃げた代償はあまりにも大きすぎます。
むしろ、きちんと対応すれば、軽微な事故なら不起訴で終わることがほとんどです。統計的に見ても、8割以上は不起訴なんです。誠実に対応すること、これが結局は自分を守る最善の方法なんですよね。
人をひいてしまった際に関する疑問解決
事故現場で示談をしてもいいですか?
絶対にやめてください。事故現場での示談は、後々大きなトラブルの原因となります。事故直後は興奮状態にあり、冷静な判断ができません。また、怪我の程度が後になって悪化することもあります。相手から「警察を呼ばなくていい」「今ここで話をつけよう」と言われても、必ず警察に届け出てください。損害賠償の請求を受けた場合は、必ず保険会社や弁護士に相談してから対応しましょう。
人をひいてしまったがパニックで何もできませんでした。どうすればいいですか?
まずは深呼吸をして落ち着いてください。パニックになるのは当然の反応ですが、落ち着いて順を追って対応することが大切です。まず車を安全な場所に停めて、被害者の安否を確認します。119番に電話して救急車を呼び、110番に電話して警察を呼びます。電話口で状況を説明すれば、オペレーターが指示をしてくれます。一人で対応するのが難しい場合は、周囲の人に助けを求めましょう。
相手が軽傷で病院に行かないと言っています。警察に届け出なくてもいいですか?
いいえ、必ず警察に届け出てください。事故直後は興奮状態でアドレナリンが出ているため、痛みを感じにくくなっています。後になってむち打ちなどの症状が出てくることもよくあります。また、警察に届け出ないと交通事故証明書が発行されず、後で保険金の請求ができなくなる可能性があります。相手が「病院に行かない」と言っていても、念のため受診を勧め、必ず警察に届け出ましょう。
人をひいてしまいましたが相手にも過失がありました。この場合の責任はどうなりますか?
相手にも過失がある場合、過失割合に応じて責任が決まります。例えば、相手が赤信号を無視して横断していた場合、相手の過失割合が高くなります。過失割合は警察の実況見分調書や目撃者の証言などを基に決定されます。相手の過失が大きい場合、刑事責任が軽くなったり不起訴になったりする可能性があります。また、民事責任についても、過失割合に応じて損害賠償額が減額されます。ただし、相手に過失があっても、救護義務や報告義務は免除されません。
自動車保険に入っていない場合はどうなりますか?
自賠責保険は法律で加入が義務付けられているため、通常はこの保険から一定額の補償が受けられます。しかし、自賠責保険だけでは補償額が不十分な場合が多く、不足分は自己負担となります。特に死亡事故や重傷事故の場合、損害賠償額が数千万円から億単位になることもあり、自己破産に追い込まれる可能性もあります。任意保険に未加入の場合、裁判で実刑判決が下されやすくなる傾向もあります。自動車を運転する場合は、必ず任意保険に加入しておくことを強くお勧めします。
ドライブレコーダーの映像は証拠として使えますか?
はい、ドライブレコーダーの映像は非常に有力な証拠となります。事故の状況を客観的に記録しているため、過失割合を決める際の重要な資料となります。事故を起こした場合は、ドライブレコーダーの映像を保存しておき、警察や保険会社に提出しましょう。また、周囲の車や店舗の防犯カメラに事故の様子が映っている可能性もあります。目撃者がいる場合は連絡先を聞いておくことも重要です。
まとめ
人をひいてしまった場合、パニックになるのは当然ですが、適切な初動対応を取ることで、その後の責任を最小限に抑えることができます。最も重要なのは、救護義務、報告義務、危険防止措置の3つの義務を確実に果たすことです。絶対にその場から逃げてはいけません。ひき逃げは非常に重い罪であり、10年以下の拘禁刑と免許取消という重大な処罰が科されます。
2025年6月の法改正により、懲役刑と禁錮刑が拘禁刑に統一されました。これは受刑者の改善更生を重視した制度変更であり、2026年1月現在、この新しい制度の下で刑事責任が問われることになります。人身事故を起こした場合の刑事責任は、被害者の怪我の程度や加害者の過失の程度によって大きく異なります。軽傷の場合は不起訴や罰金刑で終わることが多いですが、死亡事故や重傷事故の場合は拘禁刑が科される可能性があります。
行政責任として、運転免許の違反点数が加算され、免許停止や免許取消の処分を受けることもあります。民事責任として、被害者に対する損害賠償も発生します。損害賠償額は治療費や慰謝料、逸失利益など様々な要素で構成され、高額になることもあります。
人身事故を起こしてしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は早期の身柄解放、示談交渉、刑事手続への対応など、様々な面でサポートしてくれます。特に被害者との示談が成立すると、不起訴処分となる可能性が高まり、起訴された場合でも量刑を軽くする大きな事情となります。
交通事故は誰にでも起こりうるものです。万が一人をひいてしまった場合は、この記事で解説した内容を思い出し、冷静に適切な対応を取ってください。そして、日頃から安全運転を心がけ、事故を起こさないよう細心の注意を払いましょう。


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